不動産競売の種類
不動産競売には、以下の2種類があります。
担保不動産競売
担保不動産競売は、抵当権が設定されている債務者の不動産を競売にかける方法です。
抵当権者(お金を貸した者)が債務者所有の不動産を競売にかけるためには、金銭を貸借する際に債務者の不動産に担保として抵当権を設定しておく必要があります。
借入金の返済が行われない場合、抵当権者は裁判所に不動産競売の申し立てをし、裁判所は担保として設定されている不動産を差し押さえます。その後、所定の手続きの後に競売にかけられることになります。
競売で得られた金額は、債務者が借入金などの返済を行わなかった場合に、その返済に充てられます。
強制競売
強制競売は、債務者(お金を借りた者)が借入金などの返済を行わなかった場合に、債権者(お金を貸した者)が裁判所へ申し立てをすることで行われます。
担保不動産競売と異なり、抵当権者以外でも競売の申し立てが可能です。したがって、競売の対象となる債務者の財産は不動産に限りません。
強制競売の場合、競売にかけられる前に、債務者に対して正式な支払督促状が送付されます。
債務者がこの支払督促状に対して返済を行わない場合、債権者が裁判所に申し立てをし、強制競売が開始されます。
強制競売の場合、競売で得られた金額は、債務者が借入金などの返済を行わなかった場合に、その返済に充てられます。
我が国では、債権者本人が強引に債権の回収を行うことは禁じられています。
したがって、国家の力を使って債権回収を図る方法(強制執行)が用いられます。
この、不動産を強制的に売却して換金する手続きを「強制競売」といい、回収債権が住宅ローン以外であっても申立てることができます。
不動産競売の流れ
競売にかけられた不動産(競売物件)は、通常は落札された者に譲渡されます。
落札代金は、債務者が借入金などの返済を行わなかった場合に、その返済に充てられます。
競売で得られた金額が借入金などの返済額を上回る場合は、その差額が債務者に返還されることがあります。
逆に、競売で得られた金額が借入金などの返済額を下回る場合は、債務者が差額を支払うことになります。
競売物件購入のリスク
競売物件は、市場価格よりも低い価格で落札されることが多いため、不動産業者や投資家などにとっては投資対象として魅力的な場合があります。
ただし、競売にかけられた不動産には、建物や土地に瑕疵がある可能性が有ります。
また、自らが居住する目的で競売により入手した物件の場合、その物件に入居者が居住している事も有ります。
このような場合は、自らの名義に登記された後に当該入居者と退去の交渉をする事となりますが、退去を拒まれる可能性もあります。その場合の対処方法も検討する必要があります。
そのため、競売物件を購入する場合には、事前にしっかりと調査を行うことが重要です。
もし、事前の調査を怠った場合は思わぬ出費が必要となり、市場価格よりも割高になる事もあります。
最悪、入居者が居座ってしまい、にっちもさっちもいかない状態になる可能性も否定できません。
※その場合「引渡命令の申立て」を行い強制的に占有者を退去させることが可能ですが、相応の費用がかかります。
自己所有の不動産が競売にかけられたら
不動産競売は、債務者が借入金などの返済を行わなかった場合に行われる手続きですが、その手続きは、抵当権者や債権者にとっても手間や時間がかかるため、返済期限の延長や、返済計画の変更などの解決策を模索することが求められます。
債務者は、返済期限内に債務を返済することが大切です。
また、債務者が不動産競売にかけられる前に、債務者と抵当権者や債権者との間で、支払い計画の見直しや借入金の返済額の減額などの交渉が行われることもあります。
この場合、債務者は、抵当権者や債権者との交渉に積極的に臨むことが大切です。
不動産競売は、競売で得られた金額が債務者の借入金や返済に充てられるため、債務者にとっては、多額の借入金を抱えている場合には、大きな経済的負担となります。そのため、債務者は、返済期限内に返済することが重要です。
また、債務者が抱える借入金や返済額を事前に把握し、返済計画をしっかりと立てることも大切です。
自己所有の不動産が強制競売にかけられてしまった場合、特に住んでいる自宅だと
競売の進みかたを把握していないと、不本意に立ち退きを余儀なくされるような事態に陥ってしまう可能性もありますので
下記の流れを確認しておいて下さい。
競売の流れ(居住中自宅の場合)
何度か返済を滞ると、債権者(お金を貸した者)から返済に関する「督促状」が届きます。
電話やメールで督促や催告の連絡が来る事がありますが、「配達証明郵便」や「内容証明郵便」で来ることもあります。
この段階で、一括返済をすると競売になる事はありません。
また、返済計画の見直しなどの 「リスケ」 ( リスケジュール )の相談に応じてくれる債権者もいます。
しかし、相談をせずに支払いを滞ったままにしておくと次のステップに移行する可能性が高いです。
※全ての債権者が返済計画の見直しに応じて頂けるとは限りません。
督促状等を出した後、返済が無く且つ、返済についての相談も無い場合
債権者は、債権回収(貸付金の回収)を目的として管轄裁判所へ競売の申し立てを行います。
債権者からの競売申し立てを正式に受理した管轄裁判所は所定の手続きを経て、債務者へ「競売開始決定通知」を送ります。
競売申し立てから競売開始決定通知が届くまでは数週間かかります。
競売が決定すると、数週間~2ヶ月後に裁判所の執行官や不動産鑑定士が自宅に訪れ、対象物件の現況調査を行います。
現況調査は、物件の使用状態等の状況を確認し、売却基準価格(最低落札価格)を算出するための調査です。
調査日の1~2週間前には、現況調査に関する通知が債務者宛に届きます。
調査時には債務者(又は入居者)の立会いが必要となり、物件内外の写真撮影を実施します。
現況調査の日時は、裁判所が予め決定し調査日時の変更は原則できません。(日程調整可能な期間が通知書に記載されている場合は、その期間内に連絡することで日時変更できる場合もあります)
当日は、不在や居留守にしたとしても、裁判所の執行官は鍵師(鍵屋)を帯同させ、債務者(又は入居者)の承諾無に玄関を開錠して調査を行います。
尚、この行為(勝手に入室して調査をすること)は法律によって認められています。
現況調査終了後、競売の準備できしだい、裁判所より期間入札の通知書が届きます。
この通知書には、入札期間や売却基準価格(最低落札価格)などが記載がされています。
そして、通知書に記載されている日時から入札が開始され、入札には約1週間程度の期間が定められています。
開札日も決められているため、開札日に「落札者」( 買受人 )が決定します。
落札者は、有効な入札のうち最高額の入札価格を申し出た者(法人又は個人)です。
開札日に落札者(買受人)が決定した後、裁判所所定の手続きを経て売却許可決定が出されて買受人への売却が確定します。
落札者は、1ヶ月以内に裁判所へ代金を納付します。
代金納付後、当該不動産の所有権は落札者に移転します。
この時点で債務者は、物件から退去しなければなりません。
しかし、物件の引き渡しに応じないようなことがあれば、落札者(所有者)は裁判所へ「引渡命令の申立て」を行い
申し立てを受理した裁判所は占有者に対して「強制退去」を命じます。
強制退去は、家財道具なども全て強制的に運び出されてしまうため、強制退去になる前に立ち退く必要があります。
不動産競売の取り下げ
競売の取り下げ(キャンセル)は可能ですが、以下の条件が有ります。
競売の取り下げができる者
競売の取り下げができるのは、競売の申し立てをした者(債権者)です。
債務者からは如何なる理由が有っても取り下げはできません。
したがって、開始された競売の取り下げをするには債権者との話し合いが必須となります。
話し合いの結果、債権者の了承を得られれば債権者から競売の取り下げをしてもらうことになります。
※全ての債権者が競売の取り下げに応じて頂けるとは限りません。
競売の取り下げができる期日
開札が行われてしまうと取下げることはできないため、本来の取り下げタイムリミットは「開札期日」の前日までです。
しかし、債権者の多くは事務手続き上の関係から「入札日」の前日までとしています。
したがって、それまでに話し合いの決着をつけなければなりません。
但し、競売取り下げの話し合いで債権者の合意を得るには、時間がかかる可能性もあるため、
裁判所から競売開始決定通知が届いた直後に、なるべく早い時期に債権者と話し合いをする事をおすすめ致します。
※全ての債権者が競売の取り下げに応じて頂けるとは限りません。
競売の回避
競売が開始されると、競売の取下げは現実的には簡単にはいきません。
そのため、競売にならないように対処するのが最善の策です。
競売の回避方法は主に「債務整理」と「任意売却」の2つの方法があります。
債務整理
債務整理とは、借金を整理する手続きです。
「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つ方法があります。
任意整理
利息の免除や返済回数の再編成などを行い、毎回の返済額を緩和して完済を目指す。
「リスケ」(リスケジュール)などとも言われる事もあります。
個人再生
個人再生は、借入残元金を大幅に減額し、減額された残額を分割して返済する事を約束します。
自己破産
借金は全額免除されます。
しかし、不動産は勿論、自動車や貴金属類・その他、換金可能な動産類は差し押さえされた後に時価額で換金されます。
換金された金銭は債務に充当されます。
任意売却
「任意売却」(にんいばいきゃく)又は「任売」(にんばい)ともいいます。
上記「債務整理」を行うと、金融機関の「ブラックリスト」に載ってしまう可能性が高いです。
その結果、クレジットカードの新規作成や借入れなどが一定期間できなくなってしまいます。
そのため、債務整理は避けたいと考える方も多いと思います。
また、住宅ローンの残額が売却可能な実勢価格を上回っているケースもあります。
このような場合は「任意売却」で自宅を売却するという手段が競売を避けるための方法です。
「任意売却」とは、住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却を行い、売却代金から残債務を支払う方法です。
売却代金を支払った後の残りの債務は金融機関との話し合いで再分割で支払うこととなります。
「任意売却」は競売とは異なり、市場価格に近い金額で売却できる可能性があることや、明け渡しの日程などについても柔軟に話し合えるというメリットがあります。
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