(せいげんのうりょくしゃのさじゅつ)
「制限能力者」が詐術(さじゅつ)を用いて、契約等の相手方に対して、自分が制限能力者ではないと誤信させたような場合には、制限能力者(およびその「法定代理人」・「保佐人」・「補助人」)は、その契約等を取り消すことができなくなる(民法第20条)。
これはそのような悪意のある制限能力者はもはや保護に値せず、誤信した相手方の取引の安全を保護すべきであるという趣旨である。
例えば、自分が制限能力者ではないことを証明する書類を偽造して契約の相手方に交付するというような積極的な手段を用いる場合はもちろん「詐術」に該当し、制限能力者側の取消権は消滅する。
また、自分には相当の資産があるから信用せよと語る場合のように、他の言動と相まって相手方の誤信を強めた場合も「詐術」に該当する。
これに対して、単に制限能力者であることを黙秘していたというだけでは「詐術」に該当しないので、制限能力者側の取消権は存続すると解されている。
なお、民法20条により制限能力者側の取消権が消滅するには、契約等の相手方が、制限能力者であるという事実に気付いていなかったことが必要である。